資格勉強の工夫とスキマの沈思

 三月から始めた中小企業診断士の勉強。全体をざっと把握してから個々の論点にすすんでゆく、そんな計画を立て頑張ってきた。テキストは、三月三日から五月九日までの六十八日間をかけて目を通し終わることが出来た。五月の十日から問題集を始めて、今は六冊目の「経営法務」をやっている。六月二十七日には七冊目の「中小企業経営・政策」を終える予定だ。試験は八月二、三日の二日間だから、問題集をやり終えてから残り三十七日間で仕上げてゆくことになる。

 働きながらの勉強だから時間を作るのが大変である。しかも思い立ったのが三月で、普通なら一年以上はかけてする勉強を五ヶ月でしようとしているので、かなり無謀なスケジュールである。

 テキストから問題集へと、全体の把握から徐々に範囲を限定しながら進んできた。これから先はまたさらに範囲を限定してゆく。問題集は解答したあとに印を付けておいた。◎○△×の四種類だ。順に理解度を表している。これと併せて頻出の論点から優先的に問題集の二周目を行ってゆくつもりだ。つまり頻出の論点の中で×がついている問題から復習をして仕上げてゆく。効率よく得点を上げるための戦略である。各科目の頻出の論点は次の通りである。

企業経営理論

①競争戦略

代表的な競争戦略の識者であるマイケル・E・ポーターの「ファイブフォース分析」や「三つの基本戦略」などで、いかに利益を確保するかを重視するものである。

②製品戦略

マーケティング論において、製品ごと、またはその製品が成長段階のものか衰退段階のものかなどの「製品ライフサイクル」ごとに、戦略を変えてゆくものなどがある。身近な例で考えやすく、楽しみながら勉強できる。

③チャネル・物流戦略

こちらもマーケティング論において、商品をどのように消費者に届けるかに着目したものである。チャネルは商品が消費者に届くまでの経路のことで、最近ではネット販売など、多様なチャネルが存在する。

④プロモーション戦略

さらにもう一つマーケティング論からで、これは消費者や中間業者とのコミュニケーションと言える。商品にはプロモーションがつきもので、世の中にはプロモーション戦略であふれている。YouTube、インスタグラムなどのSNSや、販売促進のノベルティ、ディスプレイの仕方など、身近に感じることができ、また二次試験においても重要なものだ。


財務・会計

①経営分析

財務諸表から、企業の利益獲得能力を判定する「収益性分析」、資本の使用効率を示す「効率性分析」、支払い能力や財務面での安全性を判定する「安全性分析」がある。公式を覚え、さらに使いこなせるように練習を積むべきものであって、二次試験にも出題されるし、実務でも必須の能力である。

②損益分岐点(CVP)分析

こちらは、目標利益を達成するための営業量の計算や利益も損失も発生しない営業量である「損益分岐点」の計算などに使われる手法である。まずは、売上、変動費、限界利益、固定費、利益の関係を理解することが重要で、身近なラーメン屋などを例に考えるとわかりやすい。一杯一〇〇〇円のラーメンの売上や費用を考えてみる。ポイントは費用を、材料などの変動費と、家賃などの固定費に分けることだ。二次試験にも出題され、実務でも重要であり、公式を覚えるだけでなく使いこなせるようになっておくべきものだ。

③意思決定会計

これは、設備投資をする際に、その投資の優劣を判断するためのものである。計算問題が多く、また将来価値を現在価値に割り引くなどの考え方の理解が重要だ。図に書いて構造を理解することで、応用問題にも対応できるようになる。実務においても、どこまで正確にするかは場合によるが、重要なスキルの一つである。


運営管理

①生産管理の基本

顧客に「よいもの」を「安く」「早く(納期)」提供することを可能にするための管理の基本である。5S運動やリードタイムなど、仕事の現場でも頻繁に使用されるような用語は、必ず押さえておく必要がある。知らないと以降の勉強がスムーズに行かなくなるからだ。

②在庫管理

必要な資材を、必要な時に、必要な量を、必要な場所へ供給出来るように、各種品目の在庫を好ましい水準に維持するための諸活動である。試験では、小学生レベルの分数などの計算問題が多く、パターンがあるので、問題集でそのパターンをつかむべきものである。、

③店舗施設、色彩と照明

店舗における照明や製品の陳列などの種類を扱う。実際にお店に行ってそれらを確認すると、エピソード記憶となって、記憶に定着しやすい。

④商品販売計画

品揃え、陳列、演出、販売促進、値付けなどの活動を含む商品政策、商品化計画のことであり、出題傾向は先ほどの在庫管理と似ている。計算問題がメインであるが、ポイントは情報を整理することである。計算は小学生レベルの分数などの計算であっても、求めるべきものは何かをボックスなどの図や表を書いて整理すると間違えない。

⑤ISM(インストア・マーチャンダイジング)

店舗全体の設計に関する売り場レイアウト、什器、商品陳列についての知識であり、客単価の増加が中心的なテーマである。こちらも実際に店舗に行って確認することが出来る。例えば肉売り場に焼き肉のタレを陳列することによって、関連商品を陳列する手法であるクロスマーチャンダイジングで非計画購買をねらっているなと実感することなどが出来る。


経済学・経済政策

①経済学で使う数学

経済学では数学の知識が必要だが、診断士の試験で必要なものは限られている。一次関数やそのグラフ、グラフのシフトや数式の微分などである。

②費用関数

生産活動を行う際の利潤を最大にする行動や、利潤を最大化するためには生産量をどの程度にする事が最適かを知るものである。財務・会計では費用を変動費と固定費に分類したが、経済学ではもう少し詳細になり、生産量を一単位増加させた時に追加的に発生する費用である「限界費用」などの概念を扱う。

③無差別曲線

ある財XとYの二つの財の消費について考えるもので、満足度を表す「効用」という言葉が使用される。

④余剰分析

余剰とは市場での取引によって得られる利益のことで、「消費者余剰」「生産者余剰」「政府余剰」、それらを足した「社会的総余剰」がある。計算ではなくグラフをみて考える問題がほとんどである。

⑤ゲーム理論

参加者が複数いるゲームを想定して、互いに影響を及ぼし合う場合に参加者がどのような意思決定を行うのかの理論である。「支配戦略」「囚人のジレンマ」などがある。

⑥四十五度線分析

財の需要と供給の関係から、有効需要の原理を説明するために考案されたものである。好景気の時に消費や投資が増加することで財の需要が増加するためGDPは増加し、不景気の時は消費や投資が減少し財の需要も減少するためGDPは減少する。このような関係をグラフにしたものである。

⑦IS-LM分析

財市場(IS)と貨幣市場(LM)を同時に均衡させる国民所得と利子率の決定について考え、財政政策と金融政策の国民所得や利子率に与える影響を考えるものである。


情報経営システム

①ソフトウェア・ファイル・データ分析

いわゆるIT関連の名称を暗記するものである。仕事でパソコンを触る人なら慣れ親しんでいるものが多い。名称を解答する問題は数問出題されるので、確実に押さえたいものだ。CSVやJPG等のファイルの種類や、表計算ソフトのIF構文等の関数についても押さえておきたい。

②セキュリティ

保有する貴重な情報を守るための一連の取り組みについての知識が問われる。最近では企業レベルではもちろんのこと個人レベルでも必要な知識となってきている。暗号化における共通鍵方式や公開鍵方式、またユーザー認証について広く知っておく必要がある。

③経営情報管理

IT技術やITインフラは、ハードウェアやソフトウェアといった物的資産を購入・導入しただけでは効率的な利用や導入による目的を達成することは出来ない。適切に管理し、保守や運用を行う必要があるのだ。ITアウトソーシングやクラウドコンピューティングは代表的な管理の形態である。システム運営のリスクを把握し、適切にコントロールをするためのITリスク管理も重要になってくる。


経営法務

①株式会社の機関設計

株式、社債、資金調達や組織再編などのすべてのベースになるのが「株式会社の機関設計」である。株式譲渡制限会社と公開会社の違いや、それぞれが設置しなければならない機関などを整理して覚えておく必要がある。表や図にして覚えるのが得策である。

②産業財産権

知的財産に関連するもので、具体的には特許、実用新案、意匠、商標、についてである。それぞれ出願書類、出願から出願公開までの期間、存続期間等が違うため、整理して覚える必要がある。覚える際は「横串で覚える」と言うことが肝要だそうだ。例えば出願書類については、実用新案権だけ図面が必須であるとか、権利の存続期間については商標権だけが出願日からではなく登録日からであるなど、他と違うところに着目して覚えてゆくことが効率がよい。


中小企業経営・政策

①中小企業の動向

こちらは「中小企業白書」および「小規模企業白書」からの出題である。企業数、従業者数、売上高、付加価値額などは必ず出題され、経営指標の推移、開廃業倒産なども押さえておきたい。毎年数字は変わるので過去問を覚える必要はないが、出題形式の確認をするにはよい。

②中小企業関連の法律

中小企業の定義など基本的なことは押さえておくべきである。試験だけでなく実務においても必要だからだ。例えばクライアントが補助金の対象なのかどうかを知るためにも、業種によっての定義は押さえておくべきである。

③共済制度・融資制度

相互扶助の精神により、福祉の増進と振興への寄与を目的とした制度。例えば「倒産防止共済」は、連鎖倒産の防止のためのもので、無担保、無保証人、無利子で借りやすい。掛け金が、法人は「損金算入」にでき、個人事業主は「必要経費」とできる。つまり取引先のもしもの時に備えるだけではなく、節税効果もあるのだ。

④中小企業の成長促進のための計画

中小企業の経営革新、経営力向上、先端設備等導入、および事業継続力強化の支援を行うことにより、中小企業等の経営強化を図り、もって国民経済の健全な発展に資するために「中小企業等経営強化法」がある。これは実務でも役にたち、頻出の論点でもある。具体的には、経営力向上化計画、経営革新計画、地域経済牽引事業計画などの活動がある。

⑤補助金制度

変化する経営環境の中で持続的に事業を発展させていくために、小規模事業者が経営計画を作成し、その計画に沿って行う販路開拓や生産性向上に取り組む費用等を支援、補助する事業である。小規模事業者持続化補助金や事業再構築補助金は募集要項が毎年変化するので注意する。


 以上が各科目の頻出論点だ。あるサイトを参考にしたもので、他も参照するとどんどん増えてゆく。まずは押さえておくべきものとしてあげておいた。

 私の性格上、すべての論点を完璧にしたくなるが、ここでの目的は合格点をとることなので一〇〇点を目指してはいけない。完璧は必要ないのだ。毎日今より一点でも高くとることを目指して勉強をしている。勉強したところが全て出題されるわけではないので、出題される可能性が高いものから解いてゆく。そしてその中でも自分が理解できていないものから取りかかるのだ。こうすることで効率よく合格点に近づくと考えている。

 ここまで効率よく勉強しないといけないのは、時間がないからである。一般的には一年半から二年の期間、勉強して合格する人が多いようだ。私の場合前述のとおり、思い立ったのが三月であったので、五ヶ月の期間しかないのでこんなに急いでいる。合格できる確率はかなり低いと思うが、やれるだけやってみようと思っている。

 今あげたようなこと以外にもう一つ行っている勉強方法が、音声復習である。問題を音読して、その解答のプロセスも含めたすべてをボイスメモで録音するのだ。そしてそれを聞き返すことで復習としている。もちろん問題集を見返したり、まとめノートを作成してそれを見返すこともよい復習方法であると思うが、私の場合時間がないので、例えば歯を磨きながらでも出来る復習がよいと思ってやってみた。解答までのプロセスも声に出すので、足りないところや考え方の修正にも役に立つ。なかなか気に入っている。

 また、人には認識のタイプがあって、視覚系や聴覚系、感覚・運動系などがあるそうだ。私は音楽をやっていたせいか、聴覚が一番の刺激であるので、音声での復習は有効であるようだ。

 復習のポイントを絞ることと、スキマ時間でも復習できるように音声を録音しておくこと、こんな風にして勉強を進めている。成果は出ているかどうかはまだわからないが楽しい。それが原動力だ。

 試験勉強の合間には、スマホでゲームをしたり、関係のない哲学の本を読んでいる。W・ジェイムズ『宗教的経験の諸相』は、かなり刺激になっている。資格試験をしていると自分が神主であることを忘れていたが、それを思い出させてくれた。さらには、組織の一人として神様という存在を祀る神社を護持してゆくという行為に埋没した、個人として神という存在に向き合う感覚も思い出させてくれた。資格試験が私の人生にどんな意味があるのかわからないが、今後、個人として、信仰者として、理想家としての私の側面に何らかの具体的な力として働きかけてくれるのではないかと期待している。社会における宗教の役割を最善にするために、経済的な安定と信仰的な沈思がうまく絡み合うことを願う。


令和7年6月18日


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杉原 淳一
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