不合格
不合格、令和7年8月2日、3日に行われた中小企業診断士一次試験の結果である。試験は7科目あった。その点数は、
「経済学・経済政策」44点、
「財務・会計」24点、
「企業経営理論」54点、
「運営管理」41点、
「経営法務」48点、
「経営情報システム」32点、
「中小企業経営・中小企業政策」50点
である。平均点は42点だ。
60点以上が合格であり、科目合格もある。先に挙げた点数は自己採点であるから、配点の加減で「企業経営理論」の54点が、60点以上になることがあるかもしれないが、その可能性は限りなくゼロに近いだろう。その他の科目は、見事に不合格である。私の能力と努力が足りなかった結果である。残念であるが、受け止めて今後に活かしてゆく他はない。
試験会場は、大阪堺筋本町の「マイドームおおさか」であった。2階と3階に分かれて1800人ほどが受験したとのことである。年齢層は高めで40代以降の男性が多かったように感じた。
心地よい緊張のなか2日間にわたって受けた試験は、久しぶりの経験だったが楽しむことができた。隣のおっちゃんはいつも焦っていて、独り言が多いし、消しゴムを使うと大きく机が揺れた。自分が机を揺らしていることにも気付いていない様子で、試験中に何度も揺らしていたので嫌になったが、2日目の終わりを迎えると、この揺れもこれで最後かなと、なんだかさみしい気持ちも湧いてきた。
またそれぞれの科目の試験が終わると、限られたトイレをわれ先にとみんな走って行くのが面白かった。普通なら女性用のトイレが長蛇の列になるが、診断士試験会場では40代以上の男性が多いので、男性用トイレだけが長蛇の列である。もちろん私も走ってトイレの順番を一人でも早くに並ぼうとしたのである。さらに受験生はトイレ待ちの時間も惜しく、みんな参考書を手にしているのが見ていて滑稽だったが、このように余裕がある風の、上から目線の私自身も参考書を手にしていることがさらに滑稽さに輪を掛ける。みんな必死なのである。トイレも我慢できないし、次の科目も気になる。試験を受けるまでは他人のように思えた人たちだが、このような経験が仲間意識を私に芽生えさせた。
3月から始めた中小企業診断士の資格勉強。まず7科目のテキストに全部目を通して全体像を把握してから、問題集のすべての問題をやった。それから過去問の頻出論点順に、過去問と問題集の復習をしていったのである。全体を把握してから、個々の論点を細かく理解しようとする作戦であった。もっと合理的な方法はあったかもしれないが、中小企業診断士という資格の全体像が浮かび上がるにつれて、この資格が好きになっていったので、これでよかったと思っている。
結果は残念であるが、またさらに勉強ができると思うと「嬉しく」もある。試験に不合格になり、さらに勉強をしなければならないことが「嬉しい」というのは、矛盾することのように感じるが、診断士の資格勉強を好きになることができたので、やはり「嬉しい」のである。自分の興味や仕事上の必要性など、一石二鳥以上の効用があるこの勉強は、私にとって生きがいであるといってもよい。今後は一次試験の7科目に加えて、二次試験の勉強、そして本職である神主の勉強、さらには大学の専攻であった哲学、合計10科目を、優先順位を付けて割合を決めた時間割に沿って勉強していこうと思っている。
まず今回の自己採点の結果をもとに、合格点である60点との差を計算した。その不足差の7科目合計点を計算し、合計点に占めるそれぞれの科目の不足差の割合を出した。このときに今回試験のなかった「二次試験」には40点、「神主の勉強」、「哲学」には、55点、という架空の点数を与え、不足差の合計に組み込んだ。各科目の不足差割合は以下の通りである。
「経済学・経済政策」10.19%
「財務・会計」22.93%
「企業経営理論」3.82%
「運営管理」12.10%
「経営法務」7.64%
「経営情報システム」17.18%
「中小企業経営・中小企業政策」6.37%
「二次試験」12.74%
「神主の勉強」3.18%
「哲学」3.18%
である。
こちらの割合をもとに一週間の時間割を作成したのだ。つまり合格点数に足りない科目ほど勉強時間を取るようにしたのである。時間割を作るぐらいなら、別にこのような細かい数字を計算する必要はないが、資格の勉強をするようになってから細かい計算が私のブームであるのでご容赦いただきたい。一次試験の7科目は自己採点の結果を、その他の科目は今の時点での重要度をもとに算出した。その時間割がこちらだ。
日 財務 二次 運営 読書
月 経済 情報 中小 法務
火 財務 二次 運営 経営
水 経済 情報 哲学 神主
木 財務 二次 運営 法務
金 財務 情報 中小 経営
土 財務 情報 運営 経済
余った時間があったので、読書を1コマ入れた。とても気に入っている。「哲学」や「神主」の時間をもう少し増やしたいが、今は資格合格を優先している。
一次試験の科目については、全体像は把握したので、頻出論点の問題集、過去問をやりこんでゆく。過去問5年分の総問題数の上位6割の論点を選び、それらをまず瞬殺できるようにするのだ。6割というのは、合格点が60点だからである。
二次試験についてはまだ把握できていないことが多いので、過去問5年分を簡単に通してゆく。問題の傾向やわからないところを確認してゆくのだ。ちなみに二次試験は4科目ある。
事例Ⅰ 組織(人事を含む)を中心とした経営戦略および管理に関する事例
事例Ⅱ マーケティング・流通を中心とした経営戦略および管理に関する事例
事例Ⅲ 生産・技術を中心とした経営戦略および管理に関する事例
事例Ⅳ 財務・会計を中心とした経営戦略および管理に関する事例
経営戦略や小売店の販売、製造業の生産管理など一次試験の「企業経営理論」、「運営管理」からの出題がほとんどである。しかし事例Ⅳは「財務・会計」からの出題で、実際の財務諸表から経営分析をする。事例ⅠからⅢと違って理系の科目と言っていいだろう。売上高総利益率、売上高営業利益率、売上高経常利益率などの収益性、棚卸資産回転率、有形固定資産回転率、売上債権回転率などの効率性、流動比率、固定比率、自己資本比率などの安全性分析などである。また設備投資の経済性計算やCVP分析、キャッシュフロー計算書の作成などなかなか手強いものが多い。なかなか手強いがこの事例Ⅳが一番かっこいい。専門家としての存在意義を感じるのだ。とても興味がある。
哲学については、読書をする事もあるだろうが、問題を解いてゆくことが知識を付けて行くには効果的であることがよくわかったので、共通テストの倫理の過去問を解いている。今まで取り上げたことのなかった分野にも目を配ることができたり、私の興味がある分野が全体のなかでどのような位置にあるかを確認できて楽しい。
神主についても問題を解いて知識を付けていこうと考えたので、神社検定の問題集を買った。さすがに知っていることがほとんどだが、確認にもなるし、久しぶりに思い出す分野は、懐かしくもあり楽しいのだ。ただし神社検定には「級」があり上位の問題はかなり手強い。例えば律令制の神祇官についてや、延喜式における八神殿の記述についてなどは全くわからなかった。
以上のように勉強することが多すぎる。多すぎて何も身につかないのではないかという不安がある。しかし診断士の勉強は7科目必要なのではずすことはできない。神主の勉強は仕事であるから、こちらもはずすことはできない。哲学は個人的な興味であるので、どうしても目がいってしまう。無理に遠ざけるとすべてが嫌になってしまうかもしれない。そんな言い訳を考えながら、勉強計画を作って、それぞれにまつわる本を買うのがまた楽しい。客観的に見ると、特に迷惑もかけないし、幸せそうであるから、いいのではないかと思っている。
最近に「アクターネットワーク理論」というものを知った。これは社会科学における理論の一つで、人間だけでなく、モノや動物などの非人間も「アクター」として捉え、それらが相互に作用し合うネットワークとしての社会を記述しようとする考え方である。近代的な主体・客体という二項対立を超え、脱中心的なネットワークとして社会を捉える。そしてその社会は固定されたものではなく、絶えず変化し続けるネットワークとして捉えられることで、新たな社会像を提示するというものである。私が以前から興味のあった「関係性の存在論」と類似しているので、興味津々である。
診断士の試験に不合格になり、これからさらに勉強を頑張らなければならないのに、また違うことにも興味がわいたり、大忙しである。「アクターネットワーク理論」ではないが、私という「人間」と資格やその他の勉強という「非人間」の関係に思いを馳せ、しっかりと自己管理をしつつ、ふでのまにまに前に進んでゆこう。
令和七年八月一七日
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